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アフター・アース
(2013年/アメリカ)

【監督】
M・ナイト・シャマラン

【キャスト】
ジェイデン・スミス
ウィル・スミス
ソフィー・オコネドー
ゾーイ・イザベラ・クラヴィッツ

*あらすじ

自然環境を破壊し尽くした人類が地球を去り、遠く離れた惑星ノヴァ・プライムに移住してから1000年後――。伝説の兵士サイファ・レイジ率いるレンジャー部隊は、訓練のために宇宙を航行中に小惑星嵐に遭ってしまう。運悪く地球に墜落した宇宙船で生き残っていたのは、重傷を負ったサイファと、サイファの13歳になる息子キタイだけだった。100キロ離れた場所に落ちた発信機で救難信号を送れるのはキタイだけ。しかし、原野を行くキタイに凶暴に進化した動物たちが襲い掛かる……。

*感想 (2013年6月29日、109シネマズ富谷にて鑑賞)

「幸せのちから」以来2度目となる、ウィル・スミス、ジェイデン・スミス親子共演の映画。
今作は明確に「父子の絆」というテーマを打ち出し、SFという題材でそれを描きます。

監督は、「シックス・センス」で知られるM・ナイト・シャマラン。
近年は「エアベンダー」などで低迷が目立つようになったみたいですが、今作は、絶賛とまではいかないけどなかなか面白かったです。(しかし本国ではやっぱり興収でコケたみたいですが……)
シンプルな話なんですけど、脚本が練られているのがわかりました。

主演はウィル・スミスの息子ジェイデン・スミス。今作は完全にジェイデンが主役です。
彼が演じるレンジャー候補生キタイは、過去のトラウマや父との確執から戦士として認められることに執着しています。
成績はよくともチームワークなどの点では未熟さが目立ちます。事実、旅の途中では何度も少年らしい怯えを見せます。
そんなキタイの、孤独な旅がメインです。

もう一人の主人公サイファを演じるのはウィル・スミス。
負傷して動けない身体で、通信機を使って息子に支持を出します。
今回、ウィル・スミスはほとんど顔の表情とセリフだけの演技でしたね。

今作はほとんどこの親子俳優2人のシーンですね。
脇役として、キタイの母親ファイア(ソフィー・オコネドー)や姉センシ(ゾーイ・イザベラ・クラヴィッツ)が出てきますが、それでも家族内で完結してるんですね。
SFアドベンチャーやモンスターとのバトルを取り入れた家族ドラマと言っても過言ではないかも。



物語は惑星ノヴァ・プライムでの親子の確執から描かれます。
英雄と崇められる父を持ち、自分も戦士として一人前になりたいと焦る息子キタイ。
それが逆に父との距離を遠ざけてしまいます。
そして父であるサイファも息子に対して父親としての顔を見せられずにいます。

引退を考えるサイファが指揮する訓練にキタイも同行することになりますが、その遠征の途中で宇宙船が破壊され、あろうことか地球に墜落してしまいます。
生き残ったのはキタイとサイファの2人だけ。しかもサイファは重傷を負っていて動くことができません。
救難信号を出せる発信機は100キロ後方に墜落した宇宙船の後部にあり、そこまで危険な道程を歩いて行かねばなりません。

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父と子の絆と言えば、アメリカ映画の得意分野な感じもしますが、今作はそれがメインテーマになってるようにみせかけて、実は「恐怖に打ち勝つ心」というものを描いています。
凶暴化したサルやトラや猛禽類に襲われ逃げ惑うキタイ。物語はキタイの不安や恐怖をクローズアップします。
その恐怖に打ち勝つための答が父親サイファです。

サイファは恐怖心を克服した<ゴースト>と呼ばれる英雄という設定です。
人類が移住したノヴァ・プライムには先住民がおり、彼らが放った凶暴なモンスター<アーサ>が人類の天敵でした。
アーサは視覚や嗅覚がない代わりに人の恐怖心を察知して攻撃をしかけてきます。
不気味な巨体を見れば誰でも恐怖を覚えるし、さらにアーサは殺した人間を見せしめとして晒して恐怖心を煽るという習性まで備えた凶悪なモンスターです。

しかしサイファはある時、アーサとの闘いの最中、恐怖を忘れます。
アーサからは、恐怖心を拭い去ったサイファの姿は見えず、それを<ゴースト化>と呼びます。
その能力によってサイファは伝説の兵士となったのでした。



実は、キタイが目指す後部船体には、訓練用に捕獲されたアーサが乗せられていました。
墜落の衝撃で死んだか、宇宙船の中でまだ閉じ込められているか、それとも最悪もう既に外に出て歩きまわっているか……、それはサイファにも分かりません。
キタイの旅は恐怖の象徴であるアーサへ自ら近づいていく旅でもあるのです。

そんな息子にサイファが伝えた言葉。これがこの物語のテーマです。

「危険は目の前にあるが、恐怖は自分の中にある」

危険はただ現実としてそこにあるけれど、それに恐怖してパニックを起こすか冷静に判断し対処するかは人間次第。
逆に恐怖を感じたからといって、それが常に危険とも限らないわけです。
事実、劇中ではキタイに当初は危害を加えた巨大鳥が、後半では彼の命を救います。
(また、その救い方が姉の行動と被っていて、面白い脚本だと思いました)

「恐怖≠危険」というメッセージは、現代の世界情勢を考えるととても大切な言葉に思えます。
どこかの国はかつてテロの恐怖に屈し、危険を排除するために派兵しましたよね。「報復」という言葉を使っていましたが、あれは人々が恐怖に心を支配された結果ではないかと。
また、3.11の原発事故以降、さまざまな憶測やデマが飛び交いました。今もデマが飛び交っています。
これも「(自分が)恐怖を感じるものはすべて危険だ」という間違った危機意識からくる行動ではないかと。

この映画としては「危険≠恐怖」ということを描いていて、恐怖心を打ち消し、危険と真正面から向かい合う描写がされていますが、裏の意味としては「恐怖 ≠ 危険」、「恐怖を感じたからすべて危険なのではない。恐怖を感じる時にこそ事実を見据え冷静に行動せよ」というメッセージが読み取れるんではないかと。

まして現代はネットの普及によってさまざまな情報が拡散しやすい時代です。
地震・津波・台風・感染病……さまざまな危険が現実に僕らの前にあって、いざそれらが起こった時に人々の恐怖は簡単に世界に広がっていくでしょう。
そんな時代だからこそ、「恐怖≠危険」というメッセージが活きてくるんじゃないかと。
シャマラン監督、やっぱり良い仕事する監督なのかも。

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余談ですが、ジェイデンのラストのセリフがなかなかニクい(・∀・)ニヤニヤ
散々冒険しまくった少年が急に可愛いこと言って男の子に戻るので、観客的には「えっ、そっちですか?」みたいな感じなんだけど、これ聞いたウィル・スミスはサイファとしても実の父親としても息子のことが愛おしくなっちゃうだろうなあ(笑)


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