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イノセンス
(2004年/日本)

【監督】
押井守
【声の出演】
大塚明夫 (バトー)
田中敦子 (草薙素子)
山寺宏一 (トグサ)
大木民夫 (荒巻)
仲野裕 (イシカワ)
榊原良子 (ハラウェイ)
武藤純美 (謎の少女)
竹中直人 (キム)

*あらすじ

<少佐>こと草薙素子の突然の失踪から4年――。ある日、公安9課にアンドロイドの暴走事件に関する捜査が舞い込む。少女型の愛玩用アンドロイド<ハダリ>が原因不明の暴走を起こし、所有者を惨殺したのだ。人間のために作られたアンドロイドが何故人間を襲ったのか?バトーは、相棒のトグサとともに捜査を進めるうちに、「人間は何故、自分の似姿を作ろうとするのか」という問いに囚われるが……。

*感想(2013年2月9日、DVDにて鑑賞)


「攻殻機動隊」シリーズのレビュー第2弾。
今回は、劇場版第1作「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」の続編にあたる「イノセンス」について。

監督は、前作同様に押井守。暗くて難解な世界観は前作以上かもしれません。
音楽も川井憲次が続投。
声優陣も前作から引き続き、大塚明夫、田中敦子、山寺宏一などが中心となります。

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物語は、暴走したアンドロイドが引き起こした殺人現場へバトーがやってくる所から始まります。
愛玩用の<セクサロイド>ハダリが起こした原因不明の暴走事故。
重要人物が殺され、公安9課が捜査に乗り出します。
そんな中、ハダリの製造元ロクス・ソルス社の出荷検査部長も何者かに惨殺されます。

ロクス社の関与が濃厚になったため、バトーとトグサは北端の地・択捉へと飛びます。

今作の主人公はバトー。素子が消えた公安9課で、トグサとともに捜査にあたります。
前作で存在の定義を変えてしまった素子がどのような形でカムバックするかが、鑑賞前の気になる所だったんですが、なかなかニクい展開でしたね、うーん(笑)
素子は基本出てこないんですけど、だんだんハダリが素子に見えてくる不思議。

今回のバトーは言ってみれば、前作の素子と同じような悩みを抱える状態にあります。
肉体は全身義体、脳は一部を除いて電脳化されています。どこにも不調はないはずなのに、日々の中でふと気づく「疲れ」。「寂しさ」と言ってしまってもいいかもしれません。
素子が消えたことでバトーの心には隙間が生まれてしまっていました。それが彼をセンチメンタルにさせてしまいます。

男たちの性欲への抵抗でもあるかのようなハダリの暴走を目の当たりすることで、バトーの心は「人間と人形」の関係に支配されていきます。
「人間」と「人形」を区別するものは何か?何故、人間は人形を必要とするのか?そして、人間と人形の間にある存在<サイボーグ>である自分は?
前作同様に哲学街道をひた走る内容ですね。

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いや、ある面では前作以上に哲学しているのかもしれないです。
とにかくセリフが難解。さまざまなものからの引用で会話が成り立っているシーンもあります。
急にバトーとトグサが詩人になったのかと思うような……(笑)

押井守の引き出しすげえなあって素直に驚きましたよね。
押井監督に限らず、作家っていろんなジャンルの本や詩を圧倒的な量、蓄積してますよね。
作家になるには、まず読書家であることは最低条件かも。



物語は複雑な思考を回り道しながら、ひとつの真相に行き着きます。
結末を見て、物語をあらすじにまとめると意外に簡単な話ではあります。
なぜ、ロボットが暴走を起こしたのか?物語導入の謎にも一応、答が出ます。

ただ、難解な会話に主人公たちの感情が見え隠れしていて、知識というか教養が不充分な僕なんかには、一回では理解できない内容ですね。
何度も何度も見るうちに会話の深みを感じられるんでしょうが……。

この作品に別の視点があるとすれば、それはバトーと素子のラブストーリーでもある、ということでしょうか。
素子の去った後の心の隙間を埋められないバトー。そして肉体を超越する存在となった今でもバトーを見守っている素子。
どんなに心が通じ合っていても、存在の定義が変わったことで、今までのように人間同士の付き合いが出来ないわけですよね。そこの切なさ。

それはある意味、神と人間の関係にも似てるかもしれませんね。
そんな、「大人のラブストーリー」以上の関係性がこの2人には込められているのかもしれません。

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映像的には何も言うことなし。
少女アンドロイドの気持ち悪さや、異様な発展を遂げた択捉の背景が見所ですかね。

あと、最後になりましたが、ハラウェイ検視官が渋くて好きです。