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Avalon アヴァロン (2001年、日本)

感想 (2013年2月27日、DVDにて鑑賞)

押井守監督が、実写とアニメを融合させて描いたSF映画です。
「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」や「イノセンス」を見たばかりだったので、気になって借りてみました。

撮影はすべてポーランドで行われ、キャストも全員ポーランド人。台詞はポーランド語で語られるという映画です。(もちろん日本語吹替も収録されてます)
しかし、出資したのは日本の企業等なので、分類としては「邦画」らしいです。うーん、なんだか不思議(笑)日本とポーランドの合作ってことでいいと思うんですが……。

一応キャストを書いておくと、主役の凄腕女性ゲーマー<アッシュ>にマウゴジャータ・フォレムニャック。
共演には、ヴァディスワフ・コヴァルスキ、イェジ・グデイコ、ダリュシュ・ビスクプスキ、バルテック・シヴィデルスキなど……。
個人的には、主演の女優さん、あんまり好みではないですね。でも、攻殻の少佐を実写化したらあんな感じなのかもしれないです。

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「攻殻」の名を出しましたが、物語はなんとなく攻殻機動隊を思わせるような世界観。
サイバーパンクという点では同じジャンルになるのかも?

この物語は、<アヴァロン>という名のオンライン・ゲームが、若者たちの中で熱狂的に支持され、最早生活の一部にもなり始めている近未来が舞台。
仮想現実空間に接続したプレイヤー達は、パーティーを組んで戦闘ミッションに挑み、成績に応じた報酬を現実で受け取るという仕組み。
時にはゲーム内から戻れずに廃人になってしまう<未帰還者>も出てしまう過激な非合法ゲームです。

主人公のアッシュは、かつて<ウィザード>というチームでプレイしていましたが、チームはある事件で解散し、今は単独でプレイするソロプレイヤーです。
ゲームに没頭し、愛犬の待つ自宅とアヴァロンを往復するだけの毎日を繰り返していました。

そんな時、ウィザードの元メンバー、マーフィーが未帰還者になってしまったという情報が入ります。
マーフィーが幻のフィールドへの鍵である<ゴースト>を追って戻れなくなったことを知ったアッシュは、彼女を挑発する謎の男<ビショップ>と接触しますが……。


オンライン仮想戦闘ゲームが出てくるんですが、そんなにドンパチやってるわけでもなく。
いやドンパチしてるんですが、ストーリーが説明不足で、ドンパチに集中して楽しめないんですよね。
楽しめるアクションって、何も考えなくてもいいくらい分かりやすいじゃないですか。
この映画は戦闘シーンでも「この物語はどこに向かっているんだろう?」って考えさせられてしまうんですよね。

映像は、全体的にセピア調で、実写映像にアニメーションを大胆に盛り込んだ感じです。
セピア調にフィルターをかけた映像の中で、爆発や死んだ人間が消滅するエフェクトが出てきます。
まあ、これは説明するより見た方が早いかと。(すいません)

背景に至っては、実写なのか、絵なのか判然としないものもあって、映像美という点ではなかなか面白い映画だと思いました。
例えば、アッシュの自宅アパートが映るシーンとか……。

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テーマについては、やはり押井守監督らしいテーマが語られてるみたいですが、テーマがはっきりするまでちょっと待たされすぎな気がしました。
終盤、ようやく謎のフィールド<スペシャルA>へと行き着くわけですが、そこで映像に大きな変化が……。セピア調だった世界が、急に色彩豊かな現実の風景になっていきます。

つまり、見る側からすれば、アッシュが暮らしていた現実こそが仮想空間で、選ばれた者だけが行けるというスペシャルAこそが現実、のような描き方になってるのが面白いです。
これも結局、自分の実存はどこにあるのか?っていう哲学的なテーマなんじゃないでしょうか?

なんにせよ、アクションにスカッとするよりは、うーむ……と唸ってしまう内容でした。
川井憲次さんの音楽がやっぱり素晴らしいけど、そこまでストーリーが追いついてないちぐはぐさもあったり。
あんまり大衆向けではない作品です。