アンストッパブル (2010年、アメリカ)

感想 (2013年6月30日、TV録画にて鑑賞)

(ブロ友さまからのレビューリクエストです)

2001年にアメリカ、オハイオ州で起こった列車暴走事故をもとにした実話ベースの映画。
危険な薬品を積んで暴走を始めた無人の貨物列車を、2人の勇気ある鉄道員がなんとか止めようとする物語です。

監督は、トニー・スコット。「トップガン」などで知られるメジャー監督ですが、2012年にこの世を去ったため、この映画が彼の最後の監督作品となりました。
主演は、スコット監督と何度もタッグを組んできたデンゼル・ワシントン。暴走列車を追いかけるベテラン機関士・フランクを演じます。
フランクの相棒役には、新「スター・トレック」でカーク艦長を演じたクリス・パイン。コネで入社し、ミスばかりの新米車掌・ウィルを演じます。

共演には、操車場の若い責任者を演じたロザリオ・ドーソンの他、ケヴィン・ダン、イーサン・サプリー、ジェシー・シュラム、ケヴィン・コリガンなど。
溶接工のネッドを演じたリュー・テンプルもなんかかっこよかったですね。吹き替えのせいもあると思うんですけど。


機関士の些細な気の緩みから無人で走りだしてしまった機関車<777号(トリプルセブン)>。
最初のうちは、「ブレーキが効いてそのうち自然に止まる」と思われていましたが、やがて力行(加速状態)にあることが判明し、鉄道会社のスタッフたちは慌てます。
さらに積荷の中には発火性の有毒物質が大量にあることが分かり、このまま777号が走り続ければ市街地で脱線し大爆発を引き起こすとして、さまざまな停止作戦が行われます。

別の操車場の機関士フランクと新米車掌ウィルは、この事件を知り、運転していた機関車<1206号>を使って、会社の命令に逆らい777号を止めようとしますが……。


いやーまさにこれこそハラハラドキドキの展開!
緊張感の持続が素晴らしいですね。
有害物質を積み暴走するもはや「ミサイル」と化した機関車を止めるため、様々な停止作戦が試されますが、一向に止まらない777号。
息をつかせぬ展開で、ある意味ではこれも「ジェットコースター・ムービー」と呼べるのでは?(笑)

フランクとウィルが乗った機関車が、777号と向い合って走ってたりとか、ものすごいドキドキですよね。
単線の線路なのでこのまま行けば正面衝突。すれ違うために各所にある側線に入れるのかどうか、向こうからやってくる777号がどのくらいの速度なのか分からない恐怖。
加えて新米ウィルが間違えて貨物車を多く繋いでるというね……(笑)
フランク冷静だったけど、見てる方はすごく心配しましたよ……。

そこからの止まらない列車の追走劇。
損害を最小限に抑えようとして結果事態を悪化させてしまう会社上層部や、上層部に表向き従いつつもフランクたちに協力する操車場長コニーとの人間ドラマ、そしてなによりも、始めは険悪な関係だったベテラン機関士と新米車掌が徐々にバディとして行動していく様子。
この題材なら当然出てくるような、ある意味ベタなエピソードばかりですが、何故かそれらが面白いんですよね。見せ方が巧いんでしょうか?


主人公のフランクが、ヒーローとしてではなく、いや事実ヒーローなんですけどあくまで普通のオッサンとして描かれているのも好感持てました。
彼は何も超人的な能力を持っていないんですよね。勤続28年という経験の他には何も武器を持っていないんです。
新米車掌を見れば嫌味の一つも言うし、会社から退職を通告されていることに憤りを感じている……。
そんな、超人でも聖人でもない普通のオッサンが、一人の鉄道マンとして強大な敵<トリプルセブン>に立ち向かっていくわけですね。

たぶん、彼の行動は、自分の仕事に誇りを持っていたから出来たような気がします。
街を救って人々から称賛されて誇りを得るのではなく、彼は最初から自分が鉄道員であることに誇りを持っていたんじゃないかと。
うまく言えませんが、自分も仕事に対してそんな思いを持ちたいなと思いました。

あと、敵役の777号もなんか強すぎで良かったですね。
悪役と言ってしまっていいのか……とにかくあそこまでの強さを見せつけた敵は久しぶりな気がします。
人間の悪役も777号のパワフルさは大いに見習うべきですね。