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ヒトラー ~最期の12日間~ 
(2004年、ドイツ/イタリア/オーストリア)

感想 (2013年3月14日、DVDにて鑑賞)

1945年4月のドイツ・ベルリン市街戦を舞台に、地下要塞で指揮を執る独裁者アドルフ・ヒトラーの最後の日々を描いた戦争映画です。
監督は、「es」「レクイエム」のオリヴァー・ヒルシュビーゲルです。

主演は、ドイツの国民的俳優ブルーノ・ガンツ。
まず、見た目からして似てる?……といっても、僕の記憶にそもそもヒトラーの顔が無いんですけどね(笑)たぶん似てると思います。

共演には、アレクサンドラ・マリア・ララ、ユリアーネ・ケーラー、トーマス・クレッチマン、ウルリッヒ・マテス、ハイノ・フェルヒ、クリスチャン・ベルケルなどなど。
戦争を描いた群像劇なので、多くのキャストが登場します。


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物語は、ヒトラー総統の命令をタイプライターで文書におこす秘書として側に仕えるトラウドゥル・ユンゲの視点から、戦争末期の独裁者の二面性を描き出します。
アドルフ・ヒトラーの激しい気性だけではなく、地下要塞でのふとした日常に見せる優しさ、弱々しさ、そういったものも女性の視点から語られますね。

また群像劇ですので、市街地の戦闘に巻き込まれる市民や、将兵にもクローズアップされます。
戦いに酔う少年兵や、民間人を守ろうと奮闘する軍医、また、総統のムチャな命令に逆らえない将軍たちなど、様々な立場の人物が登場する大作ですね。


この映画、実は動画サイトで有名な映画なんです。
ヒトラーが思うように戦果をあげられない将軍たちに向かって激昂し狼狽するシーンがあるんですが、そのシーンに勝手に字幕を付けてしまうネタ動画シリーズが人気なんですよね。
「総統がお怒りのようです」って言えば分かる人も多いはず。
あの動画の元ネタがこの映画なんです。

あのネタ動画で笑った経験ある人は一度見てみるといいと思います。
元ネタは笑えませんよ~?(笑)

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映画そのものは、もちろん史実に基づく戦争映画、しかも敗戦国のですので、とても笑える内容ではございません。
終盤はいよいよヒトラーが死に、残された人々がどのような決断をしていくのかが描かれますが、これがもう…。

地下要塞に勤めていた兵士や女性秘書たちはみんな総統のことを慕っているんですね。
彼の二面性を知った上で、それでも彼について行くことを望んでいるんです。
総統の後を追って拳銃自殺する兵士、夫婦で自殺する大臣夫妻……。

とりわけ、印象に残っているのは、その大臣夫人が、自分の子供たちに睡眠薬を飲ませ、眠った頃を見計らって一人一人毒薬を飲ませていくシーン。
あれは母親の慈悲と言っていいのかどうか……。せめて苦しまずに何も知らずに死なせてやりたいという想いですよね……。

そして心のどこかでは、総統なくしてこの子達に未来は無い、という考えが骨の髄まで沁み渡っているような……。



一方、秘書のユンゲは、軍医や生き残った人たちと一緒に、地下要塞を出て連合軍の包囲を抜けようとします。
生き残るための選択ですね。

一つの権威の消滅によって、生きる目的を失い絶望した人々と、新しい価値観を受け入れ生き永らえた人々。
変化できた人間と、できなかった人間……。
ヒトラー亡き後のドラマこそむしろ見所かもしれないですね。