ツーリスト (2010年、アメリカ)

感想 (2013年4月7日、地上波にて鑑賞)

「美しいヴェネチアの風景」「ハリウッド2大スターの競演」「アッと驚く意外な結末」のはずが、フタを開けてみたら「ヴェネチア」しか残ってなかった、その存在そのものがミステリーなサスペンス映画。
フランス映画「アントニー・ジマー」(2005年)のハリウッド・リメイクだそうですね。

監督は「善き人のためのソナタ」でアカデミー外国語映画賞を受賞したドイツ人監督フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク。
出演は、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのジョニー・デップ、「17歳のカルテ」「チェンジリング」などのアンジェリーナ・ジョリー。
本作「ツーリスト」は見事なまでに「アンジーを見て楽しむための映画」になってます。


物語はロマンティック・サスペンスとも言えるもので、ヴェネチア旅行に来た傷心の男性教師フランクが謎のセレブ美女エリーズと出会うことで巨大な陰謀に巻き込まれていく、というもの。
しかし、妖艶な美女に利用される男の話かと思いきや、いきなり女側の視点から始まってしまいます。
カフェである人物からの指示を待つエリーズ、それを盗聴盗撮する捜査機関、指示に従い利用できそうな手頃な男を探すエリーズ、そして登場するフランク……。

これって順番が逆じゃないですか?(笑)
普通は平凡な男ジョニデを先に描いて、彼の前に突然現れた美女エリーズの美しさに期待感と疑念を抱かせるのでは?
しかし、この映画では騙される男フランクが「騙されるべく」登場するんですよね。もう登場した瞬間から「被害者」なんですよ(笑)
で、見る側は彼が騙されているのは百も承知で見てるわけで……。いわば俯瞰で見てますよね。フランクには悪いけど彼には感情移入しにくいし見ていて滑稽に映るわけです。

しかし、フランク視点で描かれていない、あるいは彼に感情移入できないのにはちゃんと理由があって、その部分が「意外な結末」になるわけですが、はっきり言って「そのどんでん返しはやってはいけない」レベルの結末。
そこまで我慢して見てきた者の努力が水泡に帰すような、掟破りの脱力系のオチでした。
こういうのは短編でやろうぜ……(-_-;)


そこに至るまでの内容も(アンジー以外)けして上手く出来てる映画ではないですね(´・ω・`)
追われる男を描いても誰も本気で走ってない感じだし、警察組織も間抜けぶりばかり目立って誰も本気で捜査してない……。緊張感高まる終盤に捜査拠点に通訳がやってきて個性的なトークで緊張を解いていきます……。

そのうちこれはコメディなんじゃないかと思えてきますよね。
実際、ゴールデングローブ賞ではミュージカル・コメディ部門でノミネートされて笑いを起こしたようですし(笑)

でも、この映画の監督や撮影、音楽、編集などのスタッフは、映画賞受賞の経験もある実力者なんですよね。
そんな超一流の映画人たちが集結したにも関わらず、なんとも締りの悪い作品になってしまったなあ、と。

ヴェネチアの美しい街、そしてアンジーの扇情的な後ろ姿は文句なしですけれど……。
本当に、それだけの映画……(´・ω・`)