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攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 
Solid State Society
(2006年、2011年/日本)

【監督】
神山健治
【声の出演】
田中敦子 (草薙素子)
阪脩 (荒巻)
大塚明夫 (バトー)
山寺宏一 (トグサ)
仲野裕
大川透
小野塚貴志
山口太郎
玉川紗己子
榊原良子

*あらすじ

草薙素子が公安9課を去ってから2年が経っていた。組織の変革を余儀なくされた9課では、トグサが新たなリーダーに任命されるが、それになじまないバトーは「個人的推論に則った捜査」として単独行動をとっていた。そんな中、梵字の刺青の男たちが相次いで不審な自殺を遂げる事件が発生。シアク共和国の工作員である彼らについて取り調べに応じたカ・ゲル大佐は突如国外逃亡を図り、人質をとって空港に立てこもる。トグサ率いる9課がカ・ゲルを追い詰めるも彼は「傀儡廻が来る」と叫び拳銃自殺するのだった。数日後、単独で動いていたバトーは草薙と再会する。バトーは、「Solid Stateには近づくな」との警告を残した草薙が<傀儡廻>なのではないかと疑念を持つが……。
 
*感想(2013年6月12日、DVDにて鑑賞)
「攻殻機動隊」シリーズの一つで、TVシリーズ「S.A.C.」とその第2シリーズ「2nd GIG」の続編にあたります。
神山健治監督が手がけた「攻殻」の最終作になり、もともとは劇場版として制作されますが、2006年にTVの有料チャンネルで長編アニメとして放送されます。
その後、2011年に劇場版として上映することになるのですが、この時に全編3D化が施され、全カットが3D化に合うように作り直されました。

僕が今回鑑賞したのはその3D化された2011年版の作品になります。
ただもちろんレンタルDVDなので2Dなんですが(ややこしいよねw)
何種類かバージョンがあるうちの「攻殻機動隊 S.A.C. SOLID STATE SOCIETY -ANOTHER DIMENSION-」ってタイトルのDVDです。

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で、ストーリーの方は相変わらず難解ですね。
少子高齢社会と子供を持たない人口の増加で、公営住宅の一室で医療ネットにアクセスしたまま孤独に死んでいく老人たち。
「体の良い遺産回収システム」とも揶揄されるそのシステムは老人の寝たきりを助長し、結果、干からびるように死んでいく老人たちは「貴腐老人」と呼ばれています。

そしてもう一方では虐待などを受けた子供たちが謎の失踪を遂げていること。
しかしその事実は広範囲の情報操作と電脳書き換えで表沙汰にはなっていません。
その子供たちが送り込まれるのが「聖庶民救済センター」。

財産を搾り取られるだけと知った身寄りのない貴腐老人たちは、他人の子供の「あしながおじさん」になる。
そのシステムが<ソリッド・ステート>だった……ということですよね。

相変わらず何が悪で何が正義かよく分からない事件ですが……。
「2nd GIG」の合田のように分かりやすい悪役もいませんしね……。

これまでが26話ずつの長編でじっくり描いたのに対し、この「SSS」は109分という尺もあって話もわりと小規模でまとまってます。
同じ劇場版である押井守監督の「Ghost In The Shell」や「イノセンス」に規模は近いですね。
あまり壮大な結末期待しても仕方ない……というかこの「攻殻」シリーズ自体、事件一つ一つの集まりで、世界規模の大事件ではないですからね。

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ただ、やっぱり攻殻ならではの面白さというのはありまして。
この作品ではやっぱりクライマックスの素子と<傀儡廻>の会話ですかね。
「Ghost In The Shell」の人形遣いとの対話の、神山バージョンと言ってもいいんでしょうかね?

結局、傀儡廻はいったい誰なんだ?っていう話になってくるんですけど、これはいろんな解釈ができるようになっていて。
でも、僕がファースト・インプレッションで感じたのは一つの解釈だけでした。
傀儡廻は素子の残留思念のようなものだったと……。

傀儡廻のセリフを引用すると、
「これほど身勝手な正義感を持ち合わせている人間は、お前の記憶の中にもそうはいないはずだ」
「今まで多くの意思と並列化をしてきたんだ……。集団的深層無意識がひとり歩きし始めてもおかしくはない」

素子の目にはクゼの顔が浮かび上がるので、傀儡廻はクゼなのかもしれません。というかクゼなのでしょう。
ただ、素子が持っている正義感も相当身勝手なものだし(自覚してるだろうし)、素子のセーフハウスからコシキタテアキの偽義体が動き出すシーンで鳥肌立ったことが、僕の中ではそれが答みたいなもんで……。

<並列化>……つまり異なる経験を積んだ電脳同士を同期させるわけですが、その際に生まれた記憶のカスというか残滓が、素子とは別の意思として動き始めた……みたいな。
あるいは、<集団的深層無意識>……素子は他者の意思を無意識下に封じ込めてきたわけですが、それは無自覚のうちに電脳内から外へと飛び出し、素子とは別の存在として……以下略。

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まあ、よく分かってないですが、だからこそ面白いんですが、少なくとも<並列化>というのはS.A.C.でタチコマなども使って描かれてきていたことなので、その<並列化の果て>に何があるのか?っていうことについて、今作SSSは一つの(若干ホラーな)回答を提示していますよね。
実に興味深いシリーズですよ「攻殻」は。

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