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トランス (2013年、アメリカ/イギリス)

【監督】
ダニー・ボイル
【出演】
ジェームズ・マカヴォイ (サイモン)
ヴァンサン・カッセル (フランク)
ロザリオ・ドーソン (エリザベス)

あらすじ

とあるオークション会場ではゴヤの傑作「魔女たちの飛翔」が競売にかけられていた。しかし、絵画が高値で落札されたその瞬間、強盗団が会場に押し入ってくる。競売人のサイモンは、マニュアル通りに絵画をバッグに入れて金庫へ向かうが、そこにはギャングのリーダー、フランクが待ち構えていた。頭を殴られたサイモンは、病院で目覚めるが、記憶の一部が消えてしまっていた。一方、アジトに戻ったフランクがバッグを開けると中には額縁だけがあり、絵画は消えていた…。

感想 (2013年10月11日、フォーラム仙台にて鑑賞)

ロンドン・オリンピック開会式の総監督を務めたダニー・ボイルの新作映画ですね。
ボイル監督の作品で初めて見たのが「スラムドッグ$ミリオネア」で、映画館で観て感動したのを覚えています。

その後、「127時間」を劇場に観に行ったり、「サンシャイン2057」をレンタルで見てみたりしましたが、「トレインスポッティング」や「28日後…」といった他の代表作はまだ見てません。
ただ、そのスタイリッシュな作風は充分に分かってるつもりです。

あと、音楽のセンスというか、音楽監督を選ぶセンスが、個人的にツボです。
この監督の映画を見るとサントラを欲しくなってしまいますね。

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今作「トランス」は大人のためのスタイリッシュかつちょっとエロティックなサイコ・サスペンスといった感じでしょうか?
タイトルの「トランス」とは、通常とは異なった意識状態の総称的なもの。
今作の場合は、催眠状態を指しています。

また、音楽のジャンルの一つ<トランス>は、激しいシークエンスの繰り返しがまるで<トランス状態>へと誘うようであることから名付けられたジャンルです。
本作でも、冒頭のオークション襲撃のゴタゴタでまさしくトランス・ミュージックがかかり、ちょっとやりすぎなくらいに気持ちを高ぶらせようとしてきます(笑)
映像面でも、夢と現実が交錯するようなスタイリッシュな映像・編集ですね。


物語の方なんですが、小さなサプライズが延々と続くイメージのある映画なので、その一つでも言ってしまうと魅力が半減する気もしないでもないですが……。
つまり何書いてもネタバレになりそうなんですよね。

まあ、一応公式サイトなどでもあらすじで言及してる点を挙げると、ジェームズ・マカヴォイ演じる競売人のサイモンと、ヴァンサン・カッセル演じる強盗団のボス・フランクは、実はグル。(これはけっこう序盤ですぐに明かされますので心配しないでくださいw)
オークション会場の警備体制に精通しているサイモンが強盗団を引き入れ、奪われたふりをしてフランクに絵画を渡す、というのが本来の流れだったわけです。

しかし、サイモンから受け取ったバッグには絵画は入っておらず、はずみでフランクに頭を激しく殴られ記憶喪失になったサイモンは絵画の在り処を忘れてしまっていました。
サイモンに裏切られたフランクは激昂しますが、絵画の在り処を知っている者がいるとすればそれはサイモンただ一人。
サイモンの封じ込められた記憶を探るために、催眠療法士であるエリザベス(ロザリオ・ドーソン)が登場し、物語はサイモン、フランク、エリザベスの3人の駆け引きを中心に描かれていきます。

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うん、これ以上書くとネタバレですね(笑)
とにかくスタイリッシュで夢か現実か分からないような映像の中で、それぞれの思惑が交差する心理サスペンスです。
ダニー・ボイル作品らしく、相変わらず音楽も好みだし、何より本作はロザリオ・ドーソンのナイスバディなヌードを拝めるのが素晴らしいですね!

しかし、「騙される/騙された」という謳い文句を言ってるほどには、爽快な解決編ではなかったですね。
全部分かった所で、「ふーん、なるほどね」と思ってしまいました。それ以上の感動はなかったんですよね。

思うに、「騙される」以前にそもそも真実めいたものを語ってないですし、物事の動機を過去に遡ればいくらでも物語をでっち上げることはできると思うんですよね。
要するに説明を省略したがゆえに後から契約書を読んで「騙された」と思うような感じで……。
そりゃ説明を省けば謎はいくらでも作れるよねって話ですよ。

で、その説明不足で作った謎を説明で解決する、という終盤にもちょっと不満が残りました。
期待を持たせるような序盤・中盤と裏腹に、落とし所はあまり上手くなかったかな、と。

それとも僕がまったく理解していないだけで、まったく異なる次元で「騙された」ってことなんでしょうかね?
2度3度と見るうちに最初はスルーしていた部分も気になってくるような映画なのかもしれませんね。



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