JAPAN IN A DAY ジャパン イン ア デイ 
(2012年、イギリス/日本)

【監督】
フィリップ・マーティン
成田岳

感想 (2013年5月24日、TV録画にて鑑賞)

映画監督のリドリー・スコットが率いるプロダクションと、フジテレビが共同で企画したドキュメンタリー映画です。

2011年3月11日に発生した東日本大震災。
それからちょうど1年後の2012年3月11日を、人々はどんな思いで過ごしたのか…?
一般の人々から送られた8000本の動画を繋ぎ合わせ、2012年3月11日の夜明けから夜眠りにつくまでが描かれます。


震災に絡む映画を見たのは本作が初めてですかね。
素人の撮影した映像がツギハギされてるので手ブレが酷いという話もありますが、個人的にはそんなに気になりませんでした。(テレビが小さいから?w)

3.11を経験した僕らにとっては、何気ない日常の映像ですら何かの意味を持ってるように感じますし、日本中で日々起きているプロポーズや出産などのイベントも、3月11日に起きると特別なイベントのように思えますね。
当然、映し出される人々も今日が何の日か当たり前に知っていて、何か、いつもと違う空気感の中で朝を迎えています。その雰囲気が、事情を知ってる僕には感じられるように思うんですよね。

そういった映像を朝の夜明けから夜に向かって時間順に編集していき、美しい音楽で味付けしたドキュメンタリー作品です。
制作者のコメントや主張はありません。
あくまで一般から寄せられた動画のみで構成しています。


個人的には、今一つ好きになれない映画でした。
好きとか嫌いとかで測る作品ではないですけども。

なんというか、「で、結局なにが言いたいの?」という感想を抱いてしまいました。
あまりにもメッセージ性が無いというか…。

例えば、3.11を知らない人が見たら、何についての映画かわからないし、映し出される人々の姿に何か共感することもないんでしょうね。
「3.11を知ってる人が見る」ことを前提にしているんです。(当然と言えば当然ですがw)
だから、見る側に全部丸投げしてるドキュメンタリーとも言えます。

8000本の動画が集められたと言いますが、特定の親子が何度も登場したり、(たぶん東京の)街を陽気に歩く若者たちの動画が何度も取り上げられたりしてて、しかもそれに何のメッセージも無いことが不可解です。
もともと何か特定のメッセージを発信する意図が無かったとしても、それならより多くの動画を取り上げても良かったのでは。

8000本も動画があれば、たった1秒ずつ映したって2時間超えるわけですよ。
他の多くの動画を不採用にして何故その動画を採用したのか、そこの理由はまったく見えてきません。


ただ、やはり地震の起こった2時46分のシーンだけは別で、その時間だけは日本中が黙祷している様子が映し出され、こういう言い方は不適切かもしれませんが、グッときました。
回転寿司でさえ止まっていました。
「地球が静止する日」を思い出しましたね(笑)

3.11からちょうど1年後、まだ人々の心には死者を悼む心が色濃く残っていて、ある意味で日本中の心が一つにまとまっていたのかな、と…。

ただ、残念なことに僕がこれを見たのは震災から2年が経った2013年の春。
その頃には周りを見てもテレビの中を見ても、震災後のような一体感は見られず(被災県と他の都会の温度差は常々感じてます…)、何か、このドキュメンタリー映画自体が賞味期限が切れてしまったかのような印象を受けました。

言ってみれば、この映画プロジェクトが震災後の「何かしなきゃ」という強迫観念によって作り出されたものですよね。
見た者に何かの感情を芽生えさせるというよりは、人々の感情によって生み出されたわけで…。
今となっては、「ああいうことがあったから、こういうものを作った」それくらいの意味しか感じ取れない内容だと思います。