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銀の匙 Silver Spoon

【監督】
伊藤智彦
出合小都美(副監督)
【声の出演】
木村良平 (八軒勇吾)
三宅麻理恵 (御影アキ)
櫻井トオル (駒場一郎)
高垣彩陽 (稲田多摩子)
島崎信長 (相川)
庄司将之 (常磐)
高梨謙吾 (西川)
こぶしのぶゆき (別府)
井澤詩織 (吉野)
増谷康紀 (中嶋先生)
三ツ矢雄二 (校長)

あらすじ

北海道の広大な自然の中にある大蝦夷農業高等学校(通称:エゾノー)に札幌の中学から入学してきた八軒勇吾。進学校での激しい学力競争に敗れ自信を失っていた八軒は、親から離れるために寮があるエゾノーを選んだのだが、他のエゾノー生たちの多くが明確な将来の夢を持っていることを知って焦りを感じる。そんな中、豚舎で生後間もない子豚と出会った八軒は、上下関係を決める競争に敗れた小柄な子豚に「豚丼」と名付け、面倒を見ていくことになるが……。

感想

「鋼の錬金術師」で有名な荒川弘の青春漫画「銀の匙 Silver Spoon」のTVアニメ化作品です。
勉強に明け暮れる中学時代から一転、エゾノーの酪農科学科へと進学した主人公・八軒が、農業高校の現実に揉まれ成長していく物語。
ちょっとレビューが遅れましたが、毎週見てたのでまとめたいと思います。

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■家族で見れるアニメ

「ノイタミナ」という深夜アニメ枠でありながら、萌えやエロやグロやメカに走ることなく、アニオタ以外の人にも見れるアニメですね。
(あーでもグロはありましたね……)

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ゆけちの家ではもともと妹がこの原作漫画を推していたこともあり、ほぼ家族で見ていました。
僕が実家に帰ると父が「豚丼見ないの?」と催促してくるほどでしたね(笑)


この「銀の匙」が一次産業の現実を背景に描いていることが、一般の人にも受け入れられる理由のひとつでしょうね。
北海道の大自然の中で行われるスケールの違う農業……。
その事実を主人公・八軒とともに驚きを持って見れるし、同時に農業の厳しい現実なども垣間見えてきます。

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しかし、辛い労働の対価として支払われる報酬「食い物」の美味そうなこと(笑)
「命を食べて生きる」ということを遠慮なしに描いていて食育ともつながりそうな内容ですし、ある意味ではグルメ番組ですよねこれ。

さらに、将来に悩む若者たちの姿なんかも描かれたりして、もう青春です!
そういった、誰もが興味深く見れる普遍的なテーマを、適度なギャグで包んで描いているのがこの「銀の匙」。
家族で見れる理由はそこにあるんじゃないかと思います。



■豚丼カワイイ

OPで八軒にキスする豚丼がカワイイですよね。
miwaのOPとの相乗効果で毎回身悶えしてました(笑)

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しかしこの作品は愛玩動物を愛でる番組ではなく、愛情を注いで育てた動物たちを食べるために殺す、という都会の人間が忘れがちな現実をしっかりと描写します。
豚丼は第1期で帰らぬブタとなりました。でもその無情に思える展開こそ、農業の本質なんですよね。
割りきって考えれば楽になる問題も、八軒は簡単に答えを出さずに悩みながら何度も経験しようとします。


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「カワイイ」ということで、このアニメの女性陣について。
まず、ヒロインの御影ですが、最初全然好みじゃなくて……(笑)
でも原作漫画の5巻まで読んだらちょっと株を上げてきましたね。

ただやっぱり八軒が御影家に夏休みの間寝泊まりしていたのに、何もなかったのは残念……。
第1期ではあまり存在感を示せたとは言えないような気がしますね。
残念なヒロイン……。

代わりに好きなのがチーズ女子の吉野ですね。
八軒とデキちゃった疑惑が浮上するなど、ヒロインのお株を奪っていたような(笑)
彼女と中嶋先生の関係性が面白いですね。

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タマコも良かったですね、例えば両親への下剋上発言はアニメ化して良かった部分と言えます。
まあ彼女はキャラクターにインパクトがありますからね。

同じ理由で中嶋先生の仏と明王の二面性もアニメ化して良かった点だと思います。

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■原作ありきのアニメの弊害

全巻ではないですが、原作漫画をある程度読んでからアニメ版を見たんですけど、基本的に原作に忠実なんですよね。
いや忠実というよりも「そのまま」と言った方が正確かもしれません。
つまり何が言いたいかというと、「アニメならでは」の部分がほぼ無いんです。

で、その漫画をそのまま動かしたような内容が、この作品の場合、弊害を生み出したんではないかと……。
正直、ギャグくらいしか視聴者を沸かせる部分は無い割に、そのギャグのテンポが悪かったんじゃないかと。
漫画であれば、読者のテンポで読めるんですが、アニメとなるとテンポの悪い漫才を聞かされるのは苦痛だよ、という……。

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もともと原作は「青春漫画」であって「ギャグ漫画」ではないんですけど、アニメ化するにあたってはもっとテンション高めでも良かったと思いますね。
漫画を読んだ時にはテンション高めで読んだ部分が、アニメ化すると意外にサラッと描かれてしまっていたりして。

もちろん忠実に再現すること自体を否定しませんが、もう少しアニメスタッフで再考しても良かったんじゃないでしょうか。
原作は人気漫画には違いないけど、非の打ち所がないほど完璧な漫画というわけでもないので……。


ただ、アニメで手を加えた部分で一つ印象的なのがあって。
それは御影家での住み込みバイトを終えた八軒が給料を貰うシーンなんですが、原作では居間のテーブルを挟んでのやりとりだったのが、アニメでは屋外になり、夕日に照らされながらのちょっと感動的なシーンに変わりました。(マジックアワーというやつですね)

そういう風に、原作に手を加えればもっと良くなるシーンはたくさんあるような気がしますね。
そこを隅から隅まで吟味せずに原作の焼き増しみたいな印象で終わってしまったのは残念です。
年明けに始まる第2期ではさらなるパワーアップを期待しています!



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駒場についてここまで一言も書かなかったので一言。
駒場は、オーバーワーク気味の母親を楽させるために、「甲子園に行く→プロ野球選手になって稼ぐ→稼いだ金で機械買って母親に楽させる→野球を引退したら農家を継ぐ」という素晴らしい夢を持った男子ですが、駒場のそのエピソードを見たうちの父がゆけちを見てちょっと残念そうな顔をしたので僕も頑張らないとな……(涙)