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バットマン ビギンズ (2005年、アメリカ)

【ジャンル】
アクション/アメコミ・ヒーロー
【監督】
クリストファー・ノーラン
【出演】
クリスチャン・ベール (ブルース・ウェイン)
マイケル・ケイン (アルフレッド)
リーアム・ニーソン (ヘンリー・デュカード)
ケイティ・ホームズ (レイチェル)
ゲイリー・オールドマン (ジム・ゴードン)
キリアン・マーフィ (ジョナサン・クレイン)
トム・ウィルキンソン (ファルコーニ)
ルトガー・ハウアー (リチャード・アール)
渡辺謙 (ラーズ・アル・グール)
モーガン・フリーマン (ルーシャス・フォックス)

あらすじ

大富豪の御曹司として幸福な少年時代を送っていたブルース・ウェイン。しかし、オペラの帰り道、ブルースの目の前で強盗によって両親が殺されたことで、彼の人生は一変してしまう。十数年後、成長したブルースは、両親への罪悪感、悪への復讐心といった葛藤を抱きながら世界中を放浪し、やがてヒマラヤの奥地で「影の同盟」と名乗る謎の集団と接触する。影の同盟の一員デュカードに師事して心身を鍛えたブルースは、考えの相違から同盟を抜けて故郷へと舞い戻る。腐敗の進んだゴッサム・シティを目の当たりにした彼は、自らのすべてを賭け、悪と闘うことを決意するのだった。バットマンという恐怖を犯罪者たちに知らしめるために……。

感想 (2012年6月9日、DVDにて鑑賞)

数あるアメコミ・ヒーローの中でもスーパーマンと同じくらい長い歴史を持ち、実写作品もたくさん残されているバットマン。
この「バットマン ビギンズ」はクリストファー・ノーラン監督が新たな解釈で描いた3部作の1作目です。
まもなく完結作「ダークナイト ライジング」が公開されるということで、初めてバットマンの映画を見てみました。

ノーラン作品を見るのは「インセプション」に続いて2本目。
めちゃくちゃ練られた脚本を書きますね、この監督さん。


序盤のストーリーは、クリスチャン・ベール演じる主人公ブルース・ウェインが腐敗しきったゴッサム・シティから悪を追放しようと決意するまでがじっくり描かれます。

ブルース・ウェインの人となりに関わった重要な出来事は2つ。
一つは、幼少時に敷地内の井戸に落ちた時にコウモリの群れに襲われ、怖い思いをしたこと。
この経験がトラウマとなり、幼いブルースはコウモリを怖がるようになりましたが、成長した彼は「影の同盟」での修行の中でそのトラウマを克服します。
そして、逆に、コウモリをモチーフにし、バットマンと名乗ることで、犯罪者たちにコウモリを恐怖のシンボルとして植え付けようとするんですね。これはブルース自身がコウモリ嫌いだったからこそのアイディア。
(ちなみに「人はなぜ落ちるのか?~」という名セリフはこの事故の際に登場)

もう一つは、両親を目の前で殺されたという辛い体験。
ゴッサムの治安を回復しようと慈善事業にも力を入れていた父親が、貧困層の者の手によって殺されてしまうという皮肉な展開。
しかも、オペラの内容にコウモリを連想したブルースが父に訴え、予定よりも早く劇場を後にしたことで事件に巻き込まれたと、ブルースは自分を責めます。

バットマンが悪と闘う動機には、復讐心や正義感だけでなく、自分のせいで両親は死に、自分は何もできなかったという罪悪感が大きいんですよね。
だから他のヒーローと比べるとちょっと暗いし、物語はシリアスです。


影の同盟での修行とその後の離反。(渡辺謙さん出てきます)
このへんも脚本が素晴らしい。小さな驚きが用意されてるんだけど、さらに後半でも別の驚きが用意されているという……。二段構えのどんでん返し?(笑)

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ゴッサムに戻ってきたブルースは、父の会社を引き継ぎ、莫大な私財を使ってバットマンという影のヒーローを作り出します。
意外にも執事のアルフレッドも全面協力。文句を言いながら嬉々としてバットマンの耳を発注するステキな紳士です。

というか、このマイケル・ケイン演じる執事がかなり面白い。
ユーモアにすぎる。ウィットに富んだ会話というのかな?
いや逆に他の登場人物たちが暗すぎるのかな?(笑)
まあ、とにかく好きな登場人物を挙げるとしたら、僕は間違いなくアルフレッドです。

さらには、モーガン・フリーマン演じる倉庫係も知らないうちに巻き込んで行くという大胆さ。
このへんはキャスティングが絶妙としか言えない。

逆にキャスティングで微妙だったのは、ブルースの幼なじみで検事のレイチェルを演じたケイティ・ホームズ。
似てる顔で国仲涼子ちゃんがいるんだけど、ちゅらさんの方が美しいと思ってしまった。
単に好みの問題かもしれないけど……。


後半は、幻覚ガスを使いゴッサム・シティを混乱に陥れようとする怪人スケアクロウとの闘いが描かれます。
さらにスケアクロウを操っていた黒幕も登場。
バットマンは、警察内部で唯一良心を持っているゴードンと接触し、共闘態勢を築きます。

後半の展開も脚本がよく練られていて、例えば、序盤で父親が造ったモノレールに乗るブルース少年が描かれますが、黒幕との決着の舞台もモノレール。
ブルースからすれば、父が貧しい人たちを救うために造ったものを、バットマンとして平和を守るために破壊しなければならなかったんだから、いろいろ複雑ですよね。

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ラストはブルースの人間性についての一つの見方を提示。
昼は大富豪のお坊ちゃんとして豪遊の限りを尽くし、夜は暗闇に紛れ正義の執行者として暗躍する。
果たしてバットマンの攻撃性・怒り・憎しみはブルースが作った仮面なのか?
それともブルースの深層に根付く側面なのか?

深いですね……。

とにかくいろんな所に伏線が張り巡らされているみたいなので、見れば見るほど好きになっていくであろう作品です。



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