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不確定世界の探偵物語

不確定世界の探偵物語
A DETECTIVE IN THE WORLD OF UNCERTAINTY (1984)
著者:鏡明
創元SF文庫

あらすじ

ある富豪が所有する、この世にただ一つのタイムマシン「ワンダーマシン」の力によって、世界はすっかり変わってしまった。過去に干渉することで、歴史を変え、現在をより良いものに変えていったのだ。歴史が常に変わり、事実が塗り替えられていく世界で、ノーマン・T・ギブスンは歯牙ない私立探偵として生きていた。しかし、こんな世界では犯罪の事実さえも何かの拍子に無かったことになってしまう。そんなある日、ノーマンはワンダーマシンの持ち主である“神”同然の富豪ブライスから、直々に依頼を受けたのだが……。

感想

今までの時間SFの通説を覆すような不思議な舞台設定のSFミステリーです。

舞台はタイムマシンの存在が認知されてる世界。
「ワンダーマシン」の所有者である富豪エドワード・ブライスは謎の多い人物で、「神」に似た存在とされています。

ブライスがワンダーマシンを使って歴史を変えると、それによって起こされる変化が現実に現れます。例えば、目の前にあった物がなくなったり、逆になかったはずの物が現れたり。物と同じように人も簡単に変化してしまいます。
歴史が変わることで人の記憶も書き換えられてしまいますが、変わる前の世界をすぐに忘れる人もいれば、いつまでも覚えている人もおり、個人差があります。

当然、歴史を勝手に書き換えられたらたまったもんじゃないですが、ワンダーマシンが70年以内の時間には干渉できないこと、所有者のブライスに誰も手出しができないこと、ブライスのもたらす変化が人類にとって有益であることなどから、多くの人間はとりあえずワンダーマシンを受け入れています。

主人公のノーマンは私立探偵として暮らしています。
ただし、すべての事実が変化する可能性を孕んでいるこの世界では、探偵という職業はやりづらいらしく、扱う仕事はとてもありふれたもの。例えば、浮気調査とか。

目の前の依頼人がワンダーマシンの干渉で別人に変わってしまったり、殺人事件の犠牲者がある日何事もなかったかのように現れたり、過去の犯罪そのものがなくなったために囚人が無罪になって刑務所から出てきたり、とにかく、なにもアテになるものがないんですよね。


普通のSFだと、時間旅行をしても過去は絶対に変えちゃいけないことになってるんですが、この物語だと過去は変わるものだという前提で話が進んでいくのが新感覚。(著者自身があとがきで、SFを縛り付けている規則を破りたかった、と述べてます)
何より、過去を変えるのが主人公じゃないから、主人公の知らないところでいつも事件が動き出すので、毎回謎だらけですね。

一話完結で進みますが、全体通しての謎がいくつか。
大富豪エドワード・ブライスの正体は?ワンダーマシンの形状、機能については?…などなど。

でも、一人称のハードボイルド小説みたいな感じだし、最強の美人秘書ジェニファーとのコミカルなやりとりなんかもあるので、割とサクッと読めました。
謎解きとかよりも、確実なものが何も無い時代(不確定世界)で生きてく男という世界観で読める本ですね♪