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薄桜記 (2012年) ※終盤レビュー

【原作】
五味康祐
【演出】
清水一彦
榎戸崇泰
【脚本】
ジェームス三木
【出演】
山本耕史 (丹下典膳)
柴本幸 (長尾千春)
高橋和也 (堀部安兵衛)
長塚京三 (吉良上野介)

あらすじ (第9回以降)

丹下典膳は吉良上野介の警護役を引き受け、客分として吉良邸に住み込むことになった。かつて典膳と千春の仲を取り持った上野介は、二人に復縁の話を持ちかける。その頃、行方をくらましていた堀部安兵衛が現れたとの情報が入る。安兵衛に会った典膳は「吉良を討つのは筋違い」と諭すが、安兵衛は典膳に警護から身を引くように懇願する。親友同士の闘いの時が近づいていた……。

感想

NHK時代劇「薄桜記」最終回見ましたー。
うーん、結末は予想してたんですが、思ってたのと描かれ方が違ったですかね。


終盤の9~11話は、武士の死生観を描いてましたよね。
吉良上野介についての見方も大きく変わりました。

吉良様が「斬りつけたのは浅野で斬られたのはワシじゃ。なのに何故浅野の浪人に命を狙われねばならん!」って言うのですが、それは討ち入りが怖いからではなく、犬死にするのが惜しいんだと、それが分かったのが第9回。
その時、典膳はこう質問するんですよね。「吉良家の当主はどなたですか?」と。

上野介はこの時隠居の身で、すでに若い当主に家督を譲ってる。
すると典膳は、ご隠居の警護ばかり考えている家来たちに、当主が討たれたら御家断絶だと訴えるわけです。(御家断絶を経験している典膳ならではの着眼かもしれません)
仮にご隠居が死んでも御家存続には何の影響もないと……。
(これをご隠居がいる前で言っちゃうのがすごいw)

その言葉を聞いた上野介の心にも変化が……。
自分の警護より、当主である息子の警護を典膳に命じるんですよね。
息子が生きて御家が残るなら、自分は討たれても構わない。それは犬死にではない、と。

これが上野介の死生観。あるいは家長として御家を守り・繋ぐ侍すべてに通じるのかもしれません。
それに触れた典膳の心にも変化が訪れます。


第10回では、典膳と堀部安兵衛が再会。
しかし、討ち入りされる側の吉良邸の客分と、討入りする側の赤穂浪士。
互いに腹のうちを探りあうかのような会話がちょっと痛々しい。
そしてどちらも相手の無事を願っているというのが厳しい言葉から滲み出ていて、純粋にバディものとしての面白さがありました。

やはり、親友同士が敵味方に分かれる展開はいいなあ~。
そして敵味方に分かれても相手を思いやってるのはもっといいなあ~。

しかし、安兵衛はあくまでも討ち入りに殉ずる覚悟のよう。
そして典膳自身も自分の「死に場所」を探し始めた頃だったのです……。

ちなみに、吉良夫妻の粋なはからいで決まった典膳と千春の祝言は年明けの予定。
そして赤穂浪士の吉良邸討ち入りは12月15日未明。ヽ(´Д`;)ノアゥア…
この展開の切なさは何なの!?


第11回(最終回)では、ついに討ち入り当日の典膳の最期が描かれます。
吉良邸の侍たちが気を抜いている様子を目の当たりにして、少しモチベーションが下がった典膳。
思わず千春に「赤穂浪士が羨ましい」などと口走ってしまいます。

赤穂浪士たちの暴挙を「筋違い」だと断じながらも、武士として男として、一つの目的のために命懸けで行動する様子が羨ましかったのかもしれません。
そしてもう一つ、典膳は安兵衛の事をどうしても斬りたくなかった。
しかし、吉良邸に安兵衛が討ち入ってくれば、安兵衛を斬らねばならない。

八方塞がりの中で典膳が出した答えは、安兵衛の刀によって斬られ、自らの死に場所を得ること。

いや、もうこれね、物語の途中から典膳が死ぬという予想をしていたんですけど、正直ここまでストイックに武士道貫いて死んでいくとは思いませんでした。
単にこれ、友の命を救いたいという優しさのみで行動してるわけではないんですよね。
ぶっちゃけ武士にしか分からない道理かもしれないけど、何のために剣を振るって死に、その名を汚さずに残すのか、それを常に考え続けている生き物だと思いました、侍は。

主君のあるものは主君のために死んで名を残す。
典膳には主君はいなかったから、自分で死に場所を探さないといけない。
それが、あの冬の夜の果し合いだったのだと……。

安兵衛が勧めたように、一晩身柄を隠せば典膳の命は永らえますが、それでは裏切り者のそしりを受け、名を汚してしまいます。
ならばここはいっそのこと、友の剣に斬られて果てようではないか!(いやそんな軽い気持ちではないと思うんですが、その辺の本気度は武士じゃないと分からないんでしょうね)
もうとにかく、最期の言葉「……これでよかったか?」にキュン死寸前ですよ、典膳様!


でも、思えば、最初から最後まで武家社会の時に理不尽な掟をストイックに描いていたなあ……。
前のレビューでも書きましたが、犯された女子の方が罰が重かったり、襲われて怪我すると不名誉で御家お取り潰しになるし、たまたま士官した藩が赤穂だったために親友同士が殺し合うハメになったり……。
そして極めつけは死に場所を見つけたらそこに向かっていって死んでしまう武士の生き様。

生きてこその命なのか、何かのために使い果たしてこその命なのか……。
そこに悲恋という要素を織り交ぜていて、とても楽しめました。
人情時代劇と違って基本暗いんだけど、ところどころでユーモア入れてくるし、こういうシリアスな時代劇もたまにはいいですね。(でも大河見るほど時間に余裕ない……)

ひさしぶりに時代劇見たなあ~。
1月からの「塚原卜伝」もこの流れで見ちゃおうかな。
というか、堺雅人や栗山千明が出るので見るしかないな。見よう見ようw