3.11以後、初めての劇場鑑賞となりました。
復帰第1弾(?)はリア友でブロ友“sc_utu”が勧めてくれた“180°SOUTH”。
“旅をテーマにしたドキュメンタリー映画”という認識で見に行きました。



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「180°SOUTH/ワンエイティ・サウス」(2009年、アメリカ)

原題:180°SOUTH  監督:クリス・マロイ  製作総指揮:リック・リッジェウェイ  製作:ティム・リンチ  脚本:クリス・マロイ  出演:イヴォン・シュイナード、ダグ・トンプキンス、ジェフ・ジョンソン  撮影:ダニー・モダー  配給:グラッシィ=スタイルジャム  上映時間:87分

【解説】
世界的アウトドアブランド“パタゴニア”と“ザ・ノース・フェイス”の創業者であるイヴォン・シュイナードとダグラス・トンプキンスが若き日に体験した人生最高の旅を、冒険家ジェフ・ジョンソンが追体験するドキュメンタリー。異国の地で暮らす人々との交流や、大自然の猛威と格闘しながら南米パタゴニアの高峰コルコバド山登頂を目指すジェフの姿を、数々のサーフィンムービーを手掛けるクリス・マロイが活写。伝説の旅をたどる冒険を通じて、自然とのかかわり方を改めて考えさせられる。



【感想】
(2011年4月20日、チネ・ラヴィータにて鑑賞)

まあ、正直イマイチでしたねぇ……;
友達の推薦映画だろうが、つまらなければ容赦なく斬る!
それがこのブログの方針ですm(_ _;)m


まず、なにはともあれ映像に心うたれます。大地の果てからオーラが地面を渡ってくるような幻想的な風景。南米の小さな小屋はおとぎ話に出てくるようなメルヘンな建物。美しい海、波乗りをする人と、険しい崖をよじ登っていく人。
そして、もっとも美しいと思ったのは、船首から拝む広大な海とサンセット(サンライズかも)。
ヨットに固定されたカメラによって、海面が上下にぐわんぐわん揺れます。「船はCGでいいよ」などと言ってる娯楽映画では絶対に思いつかない映像。
信じられないような光景が次々と特撮・CGなしで描かれます。

それと同時に、心癒され胸踊る音楽の数々。断崖絶壁を命がけで登っているにも関わらず、それをのんびり楽しんでいるかのような選曲です。
しかし、あまりにも音楽を流し過ぎのきらいがありますね。1時間半の上映時間でいったい何十曲聴いただろう?と、似た展開に少し疲れるくらいですね。主人公ジェフのナレーションが入ってない間はすべて音楽流れてると言っていいでしょう。1曲1曲はいい曲ばかりなので、ぜひサントラは(安く)手に入れたいですが。


前半、ラパ・ヌイ島を旅だった辺りまでは楽しく観れました。
ですが後半、ちょっと説教めいた方向へ話が進んでいきます。
結局この映画のメイン・テーマは「資本主義・大量消費社会への警鐘」「自然保護運動への理解」だと思うんですが、後半ではそれが幅を利かせてしまい、“冒険”や“旅”という感じは少し薄れた感じに思います。

そしてそのメインテーマもわりとありふれた問題意識であり、あまり目新しさはなく、興味や好奇心も湧きませんでした。
むしろ、製紙工場を批判しておきながら、ラストに「ジェフはこの旅を本にする」とか発言していることにツッコミを入れたくなってしまいますね(笑)


ジェフの仲間であるサーファーのキースが、ジェフたちがコルコバドに挑戦している最中に一人サーフィンしに行ったのは笑えましたが、基本的にサーフィン映像多すぎです。音楽と同じで、最初はいい感じなんですが、後半は「耐え」なければならない。
監督のクリス・マロイ自身がサーファーであり、サーフィン・ムービーしか撮ったことないからしかたないのかもしれませんが、調べていたらちょっと面白いことが分かりました。

彼が、パタゴニア社のサーフィンアンバサダーに名を連ねているんですね。
つまり、ジェフを旅へと導くイヴォンの“身内”が撮った映画なわけです。
一方的な主張はそのためなのかな、と妙にハラオチしました。

……と同時に新たな疑問。
この映画は果たして、誰が誰を利用し、誰が得をしたのだろう?
僕は本当に性格悪くてスイマセンm(_ _;)m

言ってる内容はいちいちごもっともだし、イヴォンとダグの功績や主義を否定するつもりはありませんが、「自分たちの守りたいものを守るために、社会のあり方を批判する」というスタンスでは、僕のような大量消費社会に依存しきっている人間からは煙たがられるだけだと思います。
そこからもう一歩深く踏み行って、「どういうあり方が良いか」という明確なビジョンを示して欲しかったです。


イースター島の興亡の歴史は興味深かったです。
次第にモアイ像を作ることに固執し始めた住民たちが、森を破壊し、競争し、それがいつしか闘争に変わっていった。
wikiで調べてみたら、「無計画な開発と環境破壊を続けた結果、資源を消費し尽くして最後にはほぼ消滅したという歴史は、現代文明の未来への警鐘として言及されることが多い」と言う風に書かれていました。たしかに映画でもそのとおりの教訓として引用されていました。わざとラパ・ヌイに立ち寄ったんじゃないかと勘ぐりたくなるくらい、映画のテーマを象徴する話。

でもこれ、ヨーロッパ人が到達した頃にはすでに文明の崩壊は進んでいたらしいです。つまり産業革命以後の近代文明が持ち込まれる前に、自然的に文明破壊が起こっていたわけで。
たしかに「自然破壊によって文明は滅ぶ」という例なんですが、逆に言えば、「資本主義・大量消費社会でなくとも、文明は滅ぶ」ということですよね。そうなると、資本主義に対するアンチテーゼとは成り得ない……?
イースター島の歴史を引っ張り出して、現代の大量消費社会を否定するのは、少し違うんじゃないでしょうか?