「虚空の旅人」

著者:上橋奈穂子
新潮文庫

【あらすじ】
新ヨゴ皇国の皇太子チャグムは、新王即位の式典に招かれて隣国サンガルを訪れた。そこで出会った<ナユーグル・ライタの目>と呼ばれる不思議な少女の背後には、南の大陸の恐るべき陰謀が隠されていた。



【感想】
「精霊の守り人」シリーズ第4作目。
「旅人」と付くものは女用心棒バルサが主人公ではない、外伝的内容になるそうです。

しかし、内容的にはいつも以上に面白い!
1~4作目まで読んで、僕はこの本が今のところ一番好きです。


なんとチャグムに友達ができました!(笑)
サンガル王国の第二王子タルサンとチャグムのやりとりが、読んでいてとても心地よかったです。
友との出会い、衝突、信頼、そして別れ……。映画にはバディ・ムービーというジャンル(というか手法)がありますが、チャグムとタルサンの関係もそんな感じがします。

新ヨゴでの皇族は神にも等しい高貴な存在であるために、民からは畏れられ、本来の自分を抑え込まなければならない思慮深いチャグムと、将軍になるために海の男たちに混じって体を鍛え、部下から絶大な信頼を寄せられている直情型のタルサン。この対比がすばらしいですね。
そんな2人が出会って言葉を交わすだけでも楽しく読めます。


上橋作品では珍しく女性キャラが豊富なことも、個人的に良かったです(笑)

タルサンの歳の近い姉で、チャグムの接待役として登場する優しく聡明な姫、サルーナ王女。
王家の女たちを束ね、時に冷徹な判断で政治を裏から支える、長姉カリーナ王女。
家舟で魚を追いながら暮らす漂海民の娘で、ちょっとドジでノロマなスリナァ。
そして、海底の民の歌に魂を引っ張られ、<ナユーグル・ライタの目>として生け贄に捧げられる運命となった、漁民の幼い少女エーシャナ。

今回バルサは回想でしか出てきませんが、逆にこれだけ魅力的な女性キャラ揃ってたら、バルサ姐さんの出る幕ないですね……。
言い方悪いけど、ギャルゲーのごとく各キャラがパターンを押さえています(笑)
(メインヒロインを幼馴染み属性のスリナァとするなら、サルーナは弟を溺愛する姉、逆にカリーナはちょっとSなキャリアウーマンの姉、エーシャナは「お兄ちゃん」となついてくる近所の幼女…。もちろん主人公は高校に通うタルサンですよ!チャグムじゃなく!w)

まぁ…、ついついそんな妄想をしてしまいますが(汗)

バルサ姐さんが主人公だとこうはいかないですよね。
どうしても男社会にどっぷり浸かってる人なので……。


とにかく、男の子たちの友情と、女の子たちの活躍に思わず笑みを浮かべながら読んだ本でした。

(もしもチャグムが同級生の役なら、「友達のお母さん」ポジションでバルサの登場もあるか?……エプロン姿のバルサ!見たい!!)(←完全に脱線;)