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ドキュメンタリー映画の皮をかぶった、ネガティブ・キャンペーンだ。
 
 
 
『ザ・コーヴ』
2010年7月12日、仙台フォーラムにて鑑賞。
 
 
 
【内容】
和歌山県太地町で毎年行われているイルカ漁を題材にしたドキュメンタリー映画。
撮影隊は立ち入り禁止区域に無許可で入り込み、『入り江』の中で行われていたことをカメラに収めた。
 
 
 
【感想】
上映中止騒動などで話題にならなければ絶対に見ることは無かっただろう。
 
イルカ漁というものを、欧米人のイルカ保護活動家の視点で一方的に否定・非難している映画だ。
巷では「プロパガンダ映画」とも言われている。
 
 
見たあとで、「つまらなかった」と思った映画はたくさんあるけど、
「しまった。この映画に金を払ってしまった……」と後悔したのは初めてだ。
できれば多くの人が、この映画に金を払わずに(つまり見ないで)毎日を過ごしてほしいと思う。
 
それというのも、内容や監督を含む出演者たちに、まったく好感が持てないのだ。
僕が払ったお金を、あの人たちはいったい何のために使うのだろうと思うと、すごく失敗した気持ちになる。
(実際には、ポイントが溜まった無料鑑賞券で見たんだけど、……同じことだろう)
 
 
結局は、捕鯨に反対する人たち(シーシェパード含む)の、一方的な主張でしかなく、
明示されているデータや映像が「本当に本物なのか」という疑念が残る、およそ『公平性』に欠けた作品だ。
 
イルカがたくさん食用にされる、海が赤く染まる、イルカは魚と違って「鳴く」ので余計にかわいそう。
それだけ分かってれば、見る必要は無い。わけの分からない団体の資金源になるだけだ。
 
 
 
それよりも興味をひくのは、この映画をめぐるいろんな『反応』だ。
 
血で染まった海のことを、友達は「CGだ」とネットの情報から断言していた。
映画を見た僕は、「嘘みたいに赤いな」くらいには思ったが、まさかCGとは思わなかったので、驚いた。
しかし、今日ネットを検索してみると、「CGは使ってない」と断言しているサイトもある。
僕は、何を信じればいいのだろうか??
 
 
上映中止になった映画館は、右派団体からの強い抗議活動でそれを余儀なくされたそうだ。
そのことに対して、今度はジャーナリストなどの著名人が「表現の自由」を訴え、
「上映中止に反対する」声明をだしたらしい。ややこしい話だ。
 
しかし、「表現の自由」を訴えた一人の田原総一朗は、その時点でこの映画を見ていたのだろうか。
 
たしかに「表現の自由」は大切だが、少なくとも『ザ・コーヴ』は、
「表現の自由を法律で認めているから、見る権利がある!」なんて声高に叫ぶほど良質な映画ではなかった。
映画より、ウィキペディアで「ザ・コーヴ」の項目を読んだ方が、よっぽど面白い。
 
 
 
ただし、ウィキペディアに掲載されている情報も、その出典元となっている雑誌やTV番組で語られた内容も、
本当に、本当にすべてが本物かどうかは、僕には判断ができない。
 
結局、人間に認識できるものなんて自分の周りの触れられるもので精一杯だし、それで充分なのだ。
だから、一度も食べたことのないイルカやクジラに同情を覚える必要もないし、
目の前に出てきたお肉に対して、罪の意識を感じる必要もないのだ。
 
 
一言:イルカの血で赤く染まる入り江の映像に、
制作サイドのどす黒い腹のうちが垣間見える。
 
★☆☆☆☆
 
『ザ・コーヴ』
原題:The Cove
監督:ルイ・シホヨス
出演:リック・オバリー、ルイ・シホヨス
配給:アンプラグド
2009年、アメリカ