133f0115.jpg

2時間ドラマとしては面白い。映画だから問題。
 
 
 
『交渉人 真下正義』
2010年7月30日、自宅にて鑑賞。
 
 
 
【あらすじ】
クリスマス・イブの夜、最新鋭の実験地下鉄車両が何者かに乗っ取られる。
「クモ」と名付けられたフリーゲージトレインは、東京の地下を無人のまま自在に走っていた。
混乱する総合司令室に、警視庁交渉課準備室課長の真下がやってくる。
やがて犯人からの電話が入り、真下と姿無き犯人の駆け引きが始まる。
 
 
 
【感想】
「踊る大捜査線」シリーズのスピンオフ作品。フツーに面白い。(少なくとも地上波で見る限りは……)
前にもやはり地上波で見たことがあるので、ストーリーも結末も分かっているのだが、
それでも緊張感を持って見られたし、たまにニヤリとした。
 

地下鉄構内を走り倒すSATがやたらカッコイイが、
この映画の最大の魅力は「メイク・チームワーク」にあると思う。
「チームワーク」ならば、「踊る」本編で何度も目にしているのだが、今回は「メイク・チームワーク」。

交渉人・真下(ユースケ・サンタマリア)は部下を率いてTTR(地下鉄会社)の司令室に乗り込んでいくのだが、司令室を恐怖で統治する指令長・片岡(國村隼)からは邪魔者扱いされてしまう。
しかし、いつしか2人は「クモ」を止めるために共闘するようになる。
「こいつで大丈夫なのか?」と思われていた真下が、終盤、指令長や線引き屋から励まされつつ送り出されるシーンは、やはり良いシーンだ。

または、木島と真下のやり取りは……言うまでもなく面白い。

細かい所を言えば、CSIのメンバーたちのハイテクなやりとりの中に、TTR広報担当(石井正則)が何故か関わっていく(例えば、携帯をパスする・両手で丸を作り合図を出す)シーンは、真剣な捜査の最中なのになにやらほのぼのしていて、「踊る」らしくて楽しめる。
ちなみに石井正則は無類のコーヒー好きだと言う事をTVで見たので、彼がコーヒーを持ってきた瞬間、「飲みてぇ~!」と激しく思った。そこらへんに置いといていいレベルの珈琲では無いよ、あれは、きっと。
 
 
 
「踊る」シリーズにしては珍しく、登場する犯人が一人。
真下vs犯人という構造がはっきりしているが、むしろ犯人よりも、犯行を阻止しようと奮闘する男たちについつい目がいってしまう。
まあ、犯人は「謎の」ままで終わってしまったしな……。犯人像を描けない以上、主人公と仲間の占める割合は増えるよな……。

でも、「犯人がよく分からない」という終わり方は、最初は「ん?」と思うけど、逆にこれでいいのかもしれない。

犯人がオタクだって時点で、犯人役としては役不足なんだよね。
ラスト、真下が車を追いかけるシーンで、車から小太りの男が汗かきながら降りてこられても困るでしょ。
ガリガリのメガネ君でもインパクト無いし。
じゃあ、茶髪のジャニーズ系?ってそれじゃ何を狙ってんのか分からない。

「ひきこもり」や「オタク」に対して世間が思っている「得体の知れない人間」という感じを、
正体を明かさずに終わらせることでよりうまく表現しているっていうか……。
僕は、全然アリだと思った。
 
 
 
というより、何をやっても文句が噴出してくる作品ではないかと。
結局、どこまで行っても「スピンオフ」の枠からは抜け出せず、フジの影響力も拭えない。
 
「踊る」のドラマシリーズからのファンにはやたら叩かれているようだ。そういう方々にとっては、ドラマシリーズはもはやバイブルのような存在で、スピンオフ作品なんて異端なんだろう。
 
この時期に地上波で流れたのも、「踊る3」で金を稼ぎたいフジの思惑だってことは分かる。
あるいは、「踊る3」を観た人すらも視聴者として想定してるのかも。
天下の金曜ロードショーの時間帯に「踊る」映画を被せてくるなんて、フジの天狗っぷりが鼻につく。
 
なので、今回でこの作品は見納め、というか、封印。
たぶん、何かにつけてTVでやるだろうけど、もう見ることはしないと思う。
「シリーズ最低の出来映え」と酷評しながらも「踊る」を見続けるファンとは、ちがうから。
 
 
一言:『ポセイドン』はバッチリ録画しますた☆

★★★☆☆
 
『交渉人 真下正義』
英題:NEGOTIATOR
監督:本広克行
出演:ユースケ・サンタマリア、寺島進、國村隼、水野美紀
配給:東宝
2005年、日本