c2bdca51.jpg

TVシリーズも見とけばよかった……(悔)
 
 
 
『ハゲタカ』
2010年8月7日、自宅にて鑑賞。
 
 
 
【あらすじ】
投資家から募ったファンドで徹底した合理主義を貫き、企業を買いたたいく“ハゲタカ”の異名を取っていた鷲津政彦(大森南朋)は、閉鎖的な日本のマーケットに絶望して海外生活を送っていた。
そんな鷲津のもとへ盟友・芝野健夫(柴田恭兵)が現われ、日本有数の大手自動車会社を巨大ファンドによる買収の危機から救ってほしいと頼む。
 
 
 
【感想】
ああ、またやってしまった……。
 
NHKで映画を放送してくれるのは大変結構なことだが、
時間を大幅にカットして流すのだけはやめてほしい。

今回は134分の映画を「スペシャル・エディション」と題し、TVドラマシリーズの解説を数分入れた後に、映画本編を106分……だったそうだ。どこが「スペシャル」?
NHKが曖昧な言葉で国民を騙しちゃいけません。
 

最近では、「春色のスープ」という映画がやはりNHK(東北地方のみ)で放送されたが、それも、終盤を20分カットして放送されていたらしい。
おかげで、映画館では死んだはずの主人公の母が、TVでは外国に出張に行ったことになって終わっている。もう、別の映画だ。(だが奇跡的に、ラストをカットしたモノの方が、後味が良いようだ)

もしかして5月にNHK教育でやってた、アニメ「MAJOR」の劇場版も、大幅にカットされていたのだろうか?
 

まあ、結局は、金を払わずに映画を楽しもうという僕が甘いのか?(NHKには払ってるよ!)
本当にそれを楽しみたいのなら、ちゃんと「カネ」を払え、世の中「カネ」だ、というわけで……。
 
 
 
(奇跡的に話が繋がったが、)映画『ハゲタカ』は、まさしく「カネ」の世界、金融業界を描いた映画だ。

真山仁の原作小説をNHKが全6話でドラマ化し、それが好評を博したので、ドラマの続編という形で映画化された作品だ。
ちなみに僕は、ドラマシリーズはまったく見たことがない。株や経済についても、知識が全然無い。

 
そういう人が見ても分かるように、簡略化して描いてるのかな、という印象を持った。
その最たるものが鷲津ファンドとブルー・ウォールのTOB合戦。
要するにヤフーオークションとさほど変わらない。

で、資金が尽きたら、ドバイの原油王にお願いしてお金出してもらう。
このあたりの、鷲津と世界の関係が(TVドラマ見てないので)よく分からなかったし、
大して努力をしてるようにも見えず、結局最初から主人公が最強だったようにしか思えない。

このあたりのカネの話は、本当はあまり重要ではなく、実はやはり人間ドラマが問題なのかな?

 
 
人間ドラマの部分では「誰」という言葉が、一つのキーワードか。

ブルー・ウォールの劉(玉山鉄二)は、経歴を調べると実は「劉」は偽名で、本当は中国の僻地の生まれらしく、「お前は誰なんだ」と鷲津に言われる。

そして劉も、自動車工場の派遣労働者の青年(高良健吾)に対して、「(会社の部品ではなく、)『誰か』になるんだよ!」と言っている。

 
リーマン・ショック後のなんか行き詰まった空気の中で(あるいはそれ以前からの資本主義社会の中で)、必死に自分自身を成立させようとする男たちのキーワードが、「誰かになる」こと。
「パシリ」でも「部品」でも「その他大勢」でもなく、皆に一目置かれる「あの人」にならなければいけない。

そんな熱いメッセージを受け取ると同時に、寒々とした現代の空気感も伝わってくる。
 
 
 
とはいえ、そんな人間ドラマの下敷きにある本筋が結局は「カネ」である。なんとも寂しい。
「幸・不幸」の基準を「カネのある不幸」と「カネのない不幸」でしか表現してくれないのである。
ラストに鷲津が何を思ったかまったく分からんし。(半分は、分かりたくないだけかもしれない)

こんな事言ったら身も蓋もないだろうが、そもそも金融モノって趣味じゃない。

さらに前述の大幅カットされてる件もあるので、今回は低めの評価にならざるを得ない。
 
 
一言:つっても、もう一度見る機会はなさそうだなぁ……。

★★☆☆☆

『ハゲタカ』
原作:真山仁
監督:大友啓史
脚本:林宏司
出演:大森南朋、玉山鉄二、栗山千明、松田龍平、高良健吾、柴田恭兵
配給:東宝
2009年、日本