最初、2部作と思っていた。
『点の記』と『線の記』で……。
『劔岳 点の記』
2010年8月22日、自宅にて鑑賞。
【あらすじ】
明治40年、日本地図完成のために立山連峰・劔岳への登頂を試みる陸軍測量士の柴崎。
現地の案内人・長次郎とともに劔岳への登り口を探す柴崎だったが、測量のための機材を背負っての登頂は不可能かに思われた。
しかし、軍上層部は陸軍の威信にかけてやり遂げろという。金持ちの登山愛好家たちで結成された「山岳会」が劔岳へ初登頂すると宣言したのだ。
果たして、柴崎率いる測量隊は、前人未到の頂きへたどり着くことができるのだろうか……。
【感想】
撮影が「苦行」だったという。実際に劔岳に撮影機材を背負って登ったという。
それはまず置いといて……。
率直に言って、僕らの世代には酷く退屈な映画。
2時間、ひたすら山を登る。あっちの山こっちの山……。
そして実際に現地で撮影された厳しい山の風景、美しい風景……。
下見の登山で見せた、雲海に夕日が沈む絵。
正直、良い絵はそこまでだった。
あとはもうひたすら似たような絵ばかりで、飽きてくる。
絵がつまらなくても、ドラマがあれば楽しめるのだが、そのドラマも印象が薄い。
結末は邦画らしい(?)やりきれない展開が待っていたが、その後の締め方がお粗末すぎる。
手旗信号で心を通わせて終わりなのか?なんだかなァ。
グッと来るセリフもなかったし、役者の良い表情も無かった。
あったのかも知れないが、そこに到るまでに僕は疲れきっていた。
結局は、映画の内容よりも撮影の困難さばかりが目立ってしまったように思う。
置いといた話を元に戻すが、「極限状態の中で撮影した」ということが本作の最大で唯一の魅力。
撮影秘話や舞台裏は、今の時代誰でも簡単にネットで知ることができる。
そんな時代性を(偶然にも)うまく利用し、注目と好感を集めた作品のように思える。
この映画についてのレビューを見てると、そんな気がしてくる。
「圧倒的な映像美」の裏付けに必ずと言ってもいいほど「撮影秘話」が持ち出される。
逆に「撮影秘話」を除いたら、あとは褒めるところは香川照之の演技くらいしか残らないのではないか。
で、思うのだ。
『劔岳 撮影の記』という『劔岳 点の記』のメイキング・ドキュメントがあるらしい。
本来は、映画の撮影の過酷さはそちらの作品で語られるべきことだ。それを編集したドキュメントなのだから。
でも、実際にはドキュメントに対する評価が映画の評価に過剰に影響してしまっている。
つまりは、我々は『映画を見ていない』ということなのだ。
一言:珍しく、「頑張った」ことが認められた作品。
★★☆☆☆
『劔岳 点の記』
監督:木村大作
原作:新田次郎
出演:浅野忠信、香川照之、松田龍平、仲村トオル、宮崎あおい、井川比佐志、夏八木勲、役所広司
配給:東映
2009年、日本
- カテゴリ カテゴリ:
- 実話・伝記映画