先日、『十三人の刺客』を観に行ったときに「宇宙戦艦ヤマト」の実写化映画『SPACE BATTLESHIP ヤマト』の予告編が流れていました。当初はキムタクが着てる制服のダサさに失笑気味で、劇場で観ることはないだろうと決めつけていたのですが、予告編を大画面でじっくり見ると……実に面白そうではないですか。ストーリーどうのよりも、映像?映像ですよ、この映画!たぶん!
で、監督を調べたら、『リターナー』『ジュブナイル』(好きなSF映画です♪)の山崎貴。『ALWAYS 三丁目の夕日』『BALLAD 名もなき恋のうた』の監督と言った方が有名かな。ストーリーの面でも難のある監督ではないですよね?(BALLAD~は見てないですが)
でも、予告編だけ面白い・予告編と全然違う映画っていうのもありますから、少し不安は残ります。しかし、「騙されてもいいや」と思えるくらいのワクワク感を予告編の中に見いだせました。公開が楽しみですね。
 
で、今回は別のSF映画のレビューです(笑)
 
 
 
 
 
『パンドラム』(PG-12)(2009年、アメリカ/ドイツ)
 
原題:PANDORUM
監督:クリスティアン・アルヴァルド
制作:ポール・W・S・アンダーソン
出演:デニス・クエイド、ベン・フォスター、キャム・ギガンデット、アンチュ・トラウェ
配給:オーバーチュアーフィルムス、ソニー・ピクチャーズ
 
【あらすじ】
西暦2174年。人類は荒廃した地球を捨てて惑星タニスへ移住する計画を立て、選ばれた者を宇宙船エリジウムに乗せる。時が経ち、船内では2名の乗組員が冷凍睡眠から目覚める。だが船内には他の乗組員がおらず、さらに2人は記憶を失っており、自分の正体もこの場に居る理由すらも忘れてしまっていた。やがて2人は船内を探索し始め、その過程で恐ろしい何者かが居ることに気づく。
 
 
 
【感想】
(2010年11月10日、チネ・ラヴィータにて鑑賞)
 
一隻の宇宙船を舞台に、人類の存続を懸けたサバイバルを描くSFスリラー。
監督はドイツの新鋭クリスティアン・アルヴァルド。制作は『バイオハザード』シリーズを手がけるポール・W・S・アンダーソン。舞台はまさにバイオハザードのようなクリーチャーが跳梁跋扈してます。
冷凍睡眠から目覚めたペイトン中尉に『バンテージ・ポイント』のデニス・クエイド。
ペイトンより少し先に目覚めたバウアー伍長に、『3時10分、決断のとき』で強盗団のしつこいサブリーダーを演じたベン・フォスター。
 
冷凍睡眠から目覚めた2人は、軽い記憶喪失の状態。
少しづつ記憶を取り戻し、この宇宙船が6万人の移民を乗せた移民船であること、自分たちが船のクルーであることを思い出します。そして、自分たちがクルー室に閉じ込められ、司令室とも連絡が取れず、船の中枢・原子炉は過電流を起こし修理が必要ということに気づきます。
ペイトンはバウアーに命じて、部屋の外への脱出を試みます。
 
 
 
ん~♪面白かったですね。
SFは好きだけど、ホラー・スリラーは苦手な僕は、結構迷いましたが結局観ました。
観て損はありませんでした。
 
序盤は完全にホラー・タッチで、音楽の高まりや、役者へのズームインだけでもかなり怖かったです。
そして中盤からは、まさか!というか、やっぱり!というか……クリーチャーの団体さんのご登場です。
ここからは一気にアクションものっぽくなっていきます。「怖い」ではなく「恐い」。
そしてクライマックス。この映画はまた違った姿を見せてくれます。「パンドラム症」とはなんなのか、黒幕の正体・真意は?そして人類はどうなってしまうのかーーーー!?
 
まあ、よく分かってないんですけども(汗;
結局なんだったのか……いろんな重大な背景が描かれてはいても、本筋とはうまく噛み合っていない感じ。
でも、なんだかわからんくても、ラスト・メッセージは粋です♪
 
 
 
 
以下ネタバレになります。
 































 
地球が消滅した理由がまったくの不明ですね。突如爆発、ですか?(爆)
人間がミュータント化すること以上に、不思議なんですが……(汗;
地球という母星を失ったことでギャロは急性的にパンドラム症に陥り、当時のクルーを殺害し、自分の王国を創りだした。
冷凍睡眠中の一部の人間をミュータント化し(そんなことが個人にできるんでしょうか?)、残った人間を順次目覚めさせ捕食させるという残酷なゲームを始めた。
バウアーが出会ったナディア(そんな名前だったんだ……)や農民やコックも、当初は捕食される側だったのだろうが、なんとか生き延びたのだろう。コックは事の次第に詳しいので、ギャロが発症したときすでに起きていたのかもしれない。
 
あるいは、突然変異はまったくの偶然・予測不能の事態だった、または、人類滅亡を悟った地球側が仕掛けた遺伝子存続のための苦渋の方策だったのかもしれない。(ミュータント化することで、外敵から身を守り、あるいは滅ぼし、遺伝子を残せる。社会的秩序は二の次と考えた?)
なんにせよ、彼女と別れ失うものが無くなったバウアーが死に場所を求めるように移民に志願し、最終的に宇宙でたった1000人しかいない人間の一人になってしまったのは、すごい皮肉。
 
 
 
ペイトンは何故、冷凍装置に入っていたのでしょう?自ら入ったとしか考えられませんが、一体何のために?
一つは、バウアーを騙し彼をゲームの主人公に仕立て上げるため、というのが考えられます。
もう一つの理由は、ペイトン自身を封印するためだったのではないでしょうか。
 
ペイトンは過去の良心と戦っていたのは事実です。おそらく(汗;
で、あるならば、彼自身が自分の内にある凶暴性や妄想性を(一時的だとしても)停止させるために自ら冷凍睡眠に入ったのでは……。自分が眠りにつけば、とりあえずゲームは中断され、それ以上の犠牲者が出ることはない。(その間にクリーチャーは繁殖してしまうかもしれないが……)
バウアーに起こされた時、確かにペイトンは記憶を失っていたのでしょう。その記憶の断片を取り戻すうちに蘇ってきたのは、ペイトンの良心ではなく、ゲームを続けなければというパンドラム症のほうだったのかもしれない。
 
 
では、"パンドラム症"とは一体何か?
宇宙航海中に閉所恐怖症によって引き起こされる、神経症や誇大妄想を伴った機能障害。
手の震えが予兆として現れる……というシーンがあったけど、体に起こる異変はスクリーンでは分からないくらいに小さい。
それよりも重大なのが、パンドラム症によって妄想にとり憑かれた乗員が、他の乗員にとって危険な存在になるということ。それによって過去に大きな事件があったというが、まあ、それもスクリーンの中の話とは、あまり関わりの無い感じ。
 
まさに、ペイトンはこの症状を発症していて、自らを終わりのない(限り無く遠い)ゲームに参加させていた。
鎮静剤を自らに注射してもなおこのゲームの王として君臨しようとする様は、パンドラム症が一過性の病状ではなく、時には人の内面を完全に作り替えてしまう(修復不可能に狂わせてしまう)怖さを持っているということでしょうか。(あんな環境に長年閉じ込められたら、そうでなくとも狂いそうですが……)
 
 
 
記憶喪失から始まる物語、もとは人間だったクリーチャーたち、閉鎖空間でのサバイバル。
いくらポール・W・S・アンダーソンがプロデュースしたからって、このへんの設定は『バイオハザード』そのもの?
 
ただ、舞台を地下研究所から宇宙空間に移したことで、巨大宇宙船の全体像や暗闇をうごめく深海生物とかの「物」がシンプルに驚きとして受け入れられる。
ストーリーの結末も「脱出」というよりは「誕生」的な印象を受け、惑星タニスの今後に思いを馳せたりもできる。
まあ、直接の続編はいらないと思うけど……(笑)