「この戦いに勝とお!」



『SPACE BATTLESHIP ヤマト』(2010年、日本)

監督・VFX:山崎貴  製作総指揮:飯島三智、阿部秀司、市川南  製作:濱名一哉、中沢敏明  脚本:佐藤嗣麻子  原作:アニメ『宇宙戦艦ヤマト』  出演:木村拓哉、黒木メイサ、柳葉敏郎、西田敏行、山崎努  音楽:佐藤直紀  撮影:柴崎幸三  編集:宮島竜治  製作会社:ROBOT  配給:東宝  公開:2010年12月1日  上映時間:138分

【あらすじ】
西暦2199年、地球は謎の異星人「ガミラス」の攻撃で滅亡の危機に瀕していた。ガミラスの遊星爆弾による攻撃で海は干上がり、地球上の生物の大半は死滅した。残された僅かな人類は地下都市を建設してガミラスの攻撃に耐えていたが、地下にまで浸透してきた放射能によって人類の滅亡まであと1年余りに迫っていた。
そんなある日の事、地球上にイスカンダルからのメッセージカプセルが届けられた。かつてエースパイロットとして活躍していた古代進(木村拓哉)は、はるか彼方のイスカンダル星に放射能除去装置がある事実を知り、宇宙戦艦ヤマトで仲間と共にイスカンダル星へ向かう。



【感想】
(2010年12月4日、109シネマズ富谷にて鑑賞)

ども、太平洋戦争はおろか、宇宙戦艦ヤマトも知らない20代後半男子です。
これもまた、緊張しながらレビューする作品。(別の意味で;)


何故、タイトルが『SPACE BATTLESHIP ヤマト』なのか。初めてタイトルを聞いたときは、木村拓哉が主演ということ以上にプッと吹きました。
しかし、監督が山崎貴ということを知って、妙にハラオチ。この監督さん、「三丁目の夕日」に「ALWAYS」って付けたり、「名もなき恋のうた」に「BALLAD」って名をつけたり、とにかく必ずと言っていいほど自身の監督作品にアルファベットのタイトルを付ける。むしろ、何故デビュー作「ジュブナイル」は正式には「JUVENILE」じゃないんだろうって、そっちのほうが今更だけど気になってしまいます(笑)下手すりゃ『宇宙戦艦 YAMATO』だったかもしれないことを思えば……、タイトルよりも中身ですよ!?

そして、この山崎監督の名が、僕を劇場まで行かせた唯一の原因になります。
『ジュブナイル』『リターナー』と、なかなか感触のいい映画だったことは覚えていて、その監督が宇宙SFを撮るとなれば、僕としては「待ってました!」的な?いろいろ不安要素はあったんですけど、とりあえず観に行こうという気になりました。
しかし、宣伝ではやたらと「木村拓哉主演!」と謳っていて、監督知るまでかなり時間がかかりましたけど。


で、肝心の中身のほうなんですが、う~んCHEAP!(笑)
CGはきれいなのに、昭和の香りがプンプンするSF映画。設定は未来なのに、過去にあった出来事のように錯覚さえしてしまいます。SF映画というよりは、特撮ヒーローものに近い毛色かな。間違っても「スタイリッシュ」ではないです。

セリフや設定にもかなりの違和感を感じました。
橋爪功演じる"長官"が、「国民の皆さん、これから人類にとって重要な話をします」と会見するのを見て、人類にとって重要な話を何故日本国民だけに話してるのか分かりません。時代は今よりグローバル化が進んでるはずの西暦2199年ですよね?
柳葉敏郎演じる船員が、主人公・古代に「俺はお前のことを弟と思っていたぞ」と唐突に打ち明けます。アニメを知らない僕は「ああ、原作ではそうなんだ?」でした。
もっと言えば、堤真一演じる古代の兄が、他の乗組員の命を預かる身でありながらサワヤカ笑顔で散っていくのが"無責任"に思えましたし、一度見たら忘れない顔・田中要次をあんなチョイ役にキャスティングする意味が分かりませんでした。余計なことを考えてしまいます(笑)

アニメとの変更点とかも結構あってそれがヤマトファンの間では賛否分かれるみたいですが、アニメ知らない人が見ても、アニメの踏襲であることは容易に想像できるストーリーでした。
山崎監督オリジナルの設定もありますが、それはまったく全体の雰囲気に呑まれてしまってるのでしょう。

やはり、実写化・映画化するときに重要なのは、設定をオリジナルにすることではなく、ストーリーそのものを刷新することなんでしょうか?
『宇宙戦艦ヤマト』が、70年代(だっけ?)の最新のSFだったとしても、実際に21世紀を迎えた僕らには古典としてしか映りません。誰でもスマートフォンを持ってる時代で、古代だけがアナライザーを持つのは?何故、ガミラスは地球に放射能で攻撃してくるのか?それは、単に原作が古典であることに他ならないのかもしれません。
果たして、僕を含む若者が、放射能をそれほど恐怖に感じるでしょうか?はっきり言って僕は「死の星」という表現にも、もはや何の怖れもないです(笑)

むしろ、ヤマトと古代だけを残し、他はばっさり切り捨て、2010年現在でSF的な技術と言われているものを元に、まったく新しいストーリーを書いたほうが、批判は出るでしょうが、ヤマトファンにとっても良かったかもしれません。


さんざん、何故?何故?と書いてきましたが、実は理由は判明しています。
単純にこの映画が、ヤマト世代とその子供向けに作られていて、そのあいだの若者世代向けではないからです。アラフォーに突入したキムタクを主演に据えたことで、年齢関係なく女性層をゲットできたみたいだけど、やはり20代男子へのフォローが出来ていない。黒木メイサ、あるいはマイコで楽しみなさいなんて、ちょっと押し付けがましいんじゃない?そもそも女性陣はヤマト世代の趣味じゃないか!(笑)
興行としては100%の出来でしたがね。


余談ですが、山崎監督はSMAPメンバーのうち3人を主演に撮ったことになりますね。
残るは吾郎ちゃんと中居くん。吾郎ちゃんは役柄さえ合えばありそうですが、中居くんはどうなんだろ?
ここまで来たんだから、ぜひコンプリートしてほしいですね。それが面白い映画ならなおいいです。
興行成績だけじゃなく、ね?