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『シルク』(2007年、カナダ/フランス/イタリア/イギリス/日本)

原題:SILK  原作:アレッサンドロ・バリッコ  監督: フランソワ・ジラール  脚本: フランソワ・ジラール、マイケル・ゴーディング  出演: マイケル・ピット、キーラ・ナイトレイ、アルフレッド・モリーナ、役所広司、芦名星、中谷美紀、國村隼、本郷奏多  音楽: 坂本龍一  撮影監督: アレイン・ドスティ  編集: ピア・ディ・チアウラ  配給:アスミック・エース  上映時間: 112分

【あらすじ】
1860年代のフランス。蚕の疫病が発生したため、元軍人のエルヴェ(マイケル・ピット)は美しい妻エレーヌ(キーラ・ナイトレイ)を残して、日本へと旅立つ。その目的は健康な蚕の卵を買い付け、無事に持ち帰ることだった。
長い旅を経て日本に到着したエルヴェは、信濃の某所・原十兵衛(役所広司)という謎の男が支配する村にたどり着き、そこで“絹”のように白い肌の女(芦名星)と衝撃的な出会いを果たす。
蚕の卵を手に入れ帰国したエルヴェ。町は活気を取り戻し彼は富を手に入れるが、彼の心は日本で出会った女に奪われたままだった。



【感想】
(2010年12月12日、TV録画にて鑑賞)

穏やかなラブストーリー。「ラブストーリー」っていう表現はちと軽いか。
最初は、欧州人が夢想する幻想的な日本を描き、そこで出会うこれまた幻想的な美女への憧れを描きます。
しかし状況が悪い方向へと動き始め、それでも悪夢を見続ける夫を、妻は……という話。

主人公の男の視線は常に芦名星に向けられているんだけど、最後にはやっぱりキーラ・ナイトレイが主演女優だったのねえ、っていうちょっとやられた感もしないでもないかな。
終わってみると、「芦名星とキーラ・ナイトレイの競演」という風には言えないですね……。


全編に渡って流れる坂本龍一の曲が、とても暗い(笑)
物語と見事にマッチングして、暗い。なんか別にこの人引っ張ってこんでも……って感じでした。お金に余裕があれば是非サントラは欲しいけど(←どっちだよ;)





芦名星はこの映画でヌードを披露しているそうですね。僕はTV放送で見たのでカットされていましたけど;
う~む、残念。やはりDVDや劇場で観ないと「見た」とは言えないのかな……。

しかし、ヌード無くても、監督が勝手に抱いている日本人(ひいてはアジア人)の妖艶な魅力というものは充分に誇張されて描かれていますね。(それがまたけっこうな“ありえなさ”で余計にファンタジーなんだけど……)
マイケル・ピットと芦名星の無言のやりとりは、なんだか見ていて『ラストサムライ』のトム・クルーズと小雪を思い出しました。トム・クルーズが小雪に着物を着せてもらうシーン。献身さと美しい所作。ああいうのに欧米男性は弱いんでしょうね。自国の女たちはやってくれなさそうだもん。まあ、現代日本でもまったく見られない光景ですけどね(;´∀`)

そのラストサムライの1シーンにとても雰囲気が似ていたんですよね。やってることはもう少しセクシーだけど。
原作『絹(SETA)』が書かれたのは90年代なので原作者のオリジナルの描写のはずなんですが、この映画が製作されたのは2007年。『ラストサムライ』の公開が2003年だったことを考えると、やっぱり監督はそのシーンを意識して撮ったんじゃないかと、どおしても勘ぐりたくなってしまいます。


ちなみに、原作本には本編の前に著者からの日本の読者へ向けた但し書きがあり、その中で「この物語で描かれる日本の姿は、欧米人が持つイメージの日本であり、日本であって日本ではない」と語っているそうです。
できれば、映画の冒頭でもそのような但し書きが欲しかったですね(笑)
「日本が出てくる」と思って見ると、裏切られます。